胡桃茶家は、先日おかげさまで7周年を迎えました。
オープン当初は、あれもこれもと欲張っていましたが、今のスタイルでやっていこうと決めてからは、日々考える事、やるべき事は決まっていて、年単位で何か目標を立てるというよりは、ひと月毎に、ひと皿を、ひと月かけて仕上げていく…ただそれだけに精一杯。
「7年目はこんな感じだったから、8年目はこうしたい」よりも、2人で話す事といえば、今の料理はこのソースの方が合うんじゃないとか、来月のコースはこれがいいんじゃないかとか…8年目に入ったからといって、何が変わる事もなく、思いを巡らせる事と言えば、目先の事ばかりで、明日のお客様の事、季節の食材の事、来月のお料理の事。
そんな毎日の積み重ねで、お正月休みの他は、大きな連休も取らず、特別なイベントもしてこなかった私達ですが、ああでもないこうでもないと何度も試している時間が最も大切な時間で、今はすっかり楽しい時間です。
一年が過ぎることは、ただ年を積み重ねているようですが、7年前の料理と、今現在の料理を比べて考えると、大きく変わったなと思います。
アラカルトは諦めてコースに重きを置くようになってからは、前菜から〆のお料理、デザートまで、一皿一皿に手間と時間をよりかけられるようになりました。
たった1人の力でできる事、どこかに比重を置かないとどこかが疎かになるというのも、実際問題として抱えていた事で、アラカルトで食べたいときて下さっていたお客様には心苦しくもあったのですが、それでも、これもあれもと欲張らなくなった今の方が、
「胡桃茶家らしい料理」
というのが、私達の中で明確になったと思います。
普段のシェフは、「俺の料理を食べてくれ!」みたいなことは、全然言葉にもせず、尤も心にもなく、見た目に反して控えめで(笑)言葉で強く主張をするほうではないけれど、シェフ自身も、オープンしたての頃の自分の料理よりも今の方が至って自信をもってご提供できる料理だと言える程です。
「アラカルトで色々食べたい」とか、「ササっと腹ごしらえしたい」とか…そんな意見もあり、今の形に変えた事は、実は、沢山のお客様の意見をないがしろにして、とても我儘にやらせていただいていると思うんです。私達自身も諦めたものや、捨てたものも沢山あると思うんです。
でも、ワクワクしながら考えた胡桃茶家らしい料理を結局はどーしても食べて頂きたいし、それが、胡桃茶家らしさだったから、諦めた以上のものを得れたと思います。
節目として10周年…3年後、3年前の今の料理と比べて俄然楽しめて、自信をもってご提供できているように、まずは、そこを目標に日々の積み重ねを大切に精進できればと思います。
そして、そんな訳で、オープン記念のお祝いも私達自身のただの節目としてひっそりと…と思い、こんな長々とした投稿も、今年はスルーしようと思っていたのですが、毎年、覚えてくださっている友人やお客様がいて、本当にありがたく思います、お花やお酒を沢山ありがとうございます!
個人でやっているからこそできないものもあれば、自分たち自身でやっているからこそできるものも沢山あります。
その分迷うことも多くて、急にスタイルが変わることが今後もあるかもしれません。
我が道を行きたいシェフではありますが、方向に迷った時には、どうか今後ともご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます!そして、今後とも変わらぬご愛顧のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。